★マイク伊藤プロフィール

本名・伊藤皓。東京・成城生まれ。

明治大学でブルーグラスのバンジョーを担当、卒業後単身渡米、フィドルに転向して全米各地で活躍。

現在はカントリーミュージックの中心として名高い米国ミズーリ州ブランソンで最古の歴史を誇る
「ボールノバーズ・ジャンボリー」で活躍中。フィドルやバンジョーを担当している。

毎年暮れからお正月にかけて帰国、Lone Star ★ Cafeでライブを行う。

左からMike、J.T.、Joshua


最近のブランソンです 2006年8月

ブランソンに住んでもう27年目になる。27年前のブランソン、そして今のブランソン。これは35年前に私が育った東京の変化よりもっとすごい。この町は不思議な町である。アメリカでもしも七不思議という話が存在するなら、間違いなくそれに含まれる町である。なぜならブランソンに相当する町は他の州にもいくつか存在するからだ。ところがなぜブランソンだけが発展するのか。

ビジネスの発展は『タイミング』とよく言われる。そしてそのタイミングがなにか目に見えない力でうまく合ってしまったというしかこの現象は他に説明出来ない。人口6000人あまりの町に年間700万人以上の観光客がやってくるなんて考えられるだろうか。そして35年前は7軒足らずの劇場が今や40軒以上、そしてその中で120以上ものショウがひしめき合っている町に変化してしまった。

まずこの町は20年ぐらい前まではローカル(地元)のミュ−ジシャンが集まって演奏する場所だった。そのうちその一軒の劇場がナッシュビルからスターをゲストとして呼ぶようになった。そしてそのスター達が口コミで仲間に伝えたのがきっかけで、ナッシュビルからさらにスター達が劇場を借りるというパターンでショウをオープンすることになった。それからが雪だるま式である。劇場が増え、人が集まり始めると自然メディアというのが注目し始める。その極めつけが全米3大ネットワークであった。中でももっとも人気のある番組CBS『60 minutes』(60分)という番組にブランソンが特集された後ブランソンの発展が決定的となった。
それ以後は全米からテレビ局が次々に訪れ、世界各地からもメディアが訪れることになった。大富豪、ドナルド・トランプがスポンサーになっているミスUSAコンテストまで2年続けて行われることになった。

一方自然の中での町の発展には常々ジレンマも生まれる。それはブランソンの場合、全米的なスター的存在の町を求めるのか、それとも自然をそのまま保つかの選択である。しかし現在、その選択は前者のスター的存在の町として全速力で発展している。広大なオザーク山系は、そしてその自然はブランソンの発展を見守るかのように、何事もないかのようにぐるりと静かに存在している。そして発展にともない元々あった劇場はほとんど廃退した。しかし一方では残った劇場のひとつが、新たに出来た劇場が毎年交代する競争の中で依前トップをばく進しているという現象もおもしろい。それはこのオザーク山系地方のオリジナル文化を売るショウ、「ボールノーバーズ」だ。そしてそのオリジナルな中にも全く違う文化を持つ日本人のミュージシャンを取り入れ、コントラストとしたこともユニークなショウとして認められている。この文を書いているマイク伊藤はその本人であるが、例えば日本のどこか果ての田舎で、いきなり青い目の白人が民謡のショウに参加していることを想像して頂きたい。ただアメリカでも外人だからいい加減な演奏でいいということは許されない。ここの音楽、カントリーミュージックの詳細にいたるフィーリングを研究し尽くさないと客も認めてくれない。この土地でもっとも古株の今年47年目のショウ、ボールノーバーズが未だに生き抜いているのがその証である。

さて発展ということに関し、今年の変化はまた凄まじい変化が進んでいる。車で、もし他に交通量がなければ通り過ぎるのに20秒かからないブランソンのダウンタウン。そこに大々的に『ブランソン ランディング』という名の大都市にあるような雰囲気を持つショッピングモールが出来た。そしてその地区に来年春までにヒルトンホテル、1万人収容のコンサートホールを兼ねた会議場まで出来ると言う。その前に流れる清涼な河、タニコモレイクの畔にもブランソン ランディングに付随したレストラン、パブがいくつか出来た。ブランソン周辺の湖、緑を堪能出来る大自然、そして都市の雰囲気も同時に堪能出来る土地に変化してしまったのである。

この町は変化の天才である。毎年違った顔を見られるのもこの町の人気の秘密の一つであろう。そして今問題のガソリン高騰。じつはこれがむしろこのブランソンへの観光客に拍車をかけている。と言うのもアメリカ中部の人間は西部、または東部、そしてフロリダ方面まで遠乗りをしないで、目の前のオザーク地方に行こうという傾向が増えたからだ。今朝の地元新聞にも今年の観光客は約7パーセント増しと書いてある。現在ブランソンの北を半円するバイパスも出来た。そして今話題になっていることは空港の構想、ブランソン近辺の町へのカジノである。カジノはまだ投票の段階である。しかしもし出来ると客層は多少変化するかもしれないが、日本人のギャンブル好きにはまた新たなアクセントが加わることだろう。

さてブランソンであいかわらず楽しめることはやはりアウトドアスポーツであろう。私の生活も昼、時間のある時はアウトドアスポーツ三昧につきる。その醍醐味の一つに湖でのボート遊び。湖といっても水温は高い。ちなみに27度前後である。ということはかなりの時間水に浸かっていても気にならないということである。ブランソンにはショウのみならず、ショッピング、アウトドアスポーツ、そして古き良きアメリカが存在する。地元のいわゆるおおらかな人の良さ、その中に存在するアメリカ文化。そしてその文化は古さと、前述した発展の新しさが交差する今日この頃。是非このアメリカの七不思議、ブランソンを共有して頂きたい。

Mike Ito